Opalpearlmoon

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理性の絲が切れるおと。

 
その瞬間に満ちる響きは甘美に違いない。
 
 
 
「天使のカンタレラ」の一番の見どころは、鈴影さんがユメミを抱きしめ、告白をするところです。
 
異論は認めない。
 
 ディアラン素敵とか光坂クンの活躍とかいろいろありますけど、これは譲れないです。
ひとみ先生の著作の中で一番「粗い」作品は「天使のカンタレラ」だと思っている(暴言)ので、いろいろ言いたいことはあるし読んでいて辛いところもあるのですが、問答無用にこのシーンが好きです。
ときめかずにはいられない。
鈴影聖樹原理主義者とでも呼んでください()
 
どうして彼は耐えることができなかったのだろう。
 
ユメミちゃんは総帥と貴女であることに優越感を持っていたところがあるわけですが、同じように鈴影さんにもあったと思うんですよ。
総帥と貴女の絆で結ばれた唯一無二の関係であることに。
たとえユメミが恋に落ちて結婚をしたとしても、自分とユメミは特別で在り続けると。
そう思い自分を支えていたんじゃないかな。
それをいきなり敵であるディアランに反則ともいえる裏技「天使のカンタレラ」で覆された。
ユメミは神聖オーディン帝国に残ることになり、貴女になることができなくなり、絆は断ち切られてしまった。
この時の衝撃は計り知れないものだったと想像できます。
だって、勢いに任せて自分の心の内をユメミに語ってしまうんですよ。
好きな人がいて、それを堪えているって……
普段の鈴影さんなら人に語ったりしない。というか、できない。
弱みを人に晒すことは、常に誇り高く強くいる彼の生き方に反してるから。
でも、そうせずにはいられないほど動揺して傷ついているんですよね。
私、すごく好きなんですよね、このシーン。
傷ついて、それに耐えられなくて弱さを見せてしまう鈴影さんの瑞々しさにドキドキしてしまう。
それが、理性の絲に入った最初の切れ目。
その後は光坂クンとユメミが物語の流れを作り、鈴影さんはその流れに乗るままでした。
それもいけなかったのかもしれない。
彼が中心になって物語を動かしていたら、気分も思考も紛れ、気持ちを変えていられたかもしれない。
どんな気持ちでいたんだろうと思う。
じっと抱えたまま、ディアランと彼に恋する彼女を見つめていたんだろうと思う。
絲はちりちり千切れ悲鳴を上げて、細くなっていく。
 
ユメミちゃんが好かれることはディアランが初めてではないんですよね。
他にも両想いになる可能性はあった訳で、それは耐えれたのか。
火狩さんは親友だし、妥当というか、想定の範囲内
ヒロシや光坂クンは、こういっちゃなんですけど格下とみてただろうから、ユメミを想う姿をみてもそんなにつらくはなかったのかも。
自由な片想いをうらやましく思うところはあったかもしれませんが……、揺らがない。
もっと穿った見方をすると、自分が本気でアプローチすればユメミが落ちる自信があったのだと思う。自分がいかに素敵かわかってるから()その余裕かな。
この3人だったら、きっとユメミと両想いになっても大丈夫だったと思います。
そういやルスカに対してはわかりやすく敵意をあらわにしてましたね。
ルスカは誘拐監禁事件の容疑をかけられているとはいえ直接の敵ではなく、慎重に交渉しないといけない相手の仲間なのに、キレてたなあ、総帥。
あれ、総帥案外わかりやすい疑惑発生ですかね?
そういうところも愛しいです()
 
同じように想いを寄せていたヒロシや光坂クンは何故たえることができたのか。
それはちゃんと「恋」をしていたからだと思います。
ヒロシは強引な形だったけど告白をしているし、光坂クンはいつでも恋心をつたえていましたしね。
その上で、ユメミの想いが一番恋に近いのはレオンじゃないかと疑っていた。
いつかは振り向かせたいけど、今はレオンに気持ちが向いているのかもしれない。
光坂クンは相手にされていないし、ヒロシは保留という形で収まりましたから、一種の覚悟のようなものがあったのだと思います。
だから超展開でユメミを失おうとも、彼女のことを想って仕方ないとたえることができた。
鈴影さんは想いを「恋」として発露することができなくて、心の中に閉じ込め続けてきた。
「恋」をすることができなかった気持ちはいき場を失い、追い詰められ、凝り、どうしようもなくふくらんで……
ついに理性の絲を切る。
 
抱く腕にやさしい思い遣りはなく、熱い言葉は彼女の気持ちを考えない。
ただ自分の思うがまま衝動のままに。
彼の理想は敗北する。
 
理性の絲が切れるときにたてる音は、きっと甘く美しい。
だから我を忘れて聴きひたり、あらがうことができないのでしょう。
 
 
 
冷泉寺さんに腕をひっぱられた瞬間、彼はどんな顔をしていたのか。
知りたい私は意地悪だと思う(笑)