Opalpearlmoon

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地獄の釜を開いてみよう ~彼は知らずか、知らいでか~

 
 
地獄の釜を開いてみようシリーズ第三弾、
本日開けてみる地獄の釜はですね……
 
鈴影聖樹は冷泉寺貴緒の気持ちに気づいていたのか気づいていなかったのか。
 
でございます。
銀バラはユメミちゃんの一人称であり、ユメミちゃんが知らないこと、意識が向かないことは基本的に書かれていないのですが、冷泉寺さんが鈴影さんを想っていることは本文の描写で読者にはわかるように書かれています。
彼女の一人称で書かれた「白鷹どりいむ」もありましたしね。
しかし鈴影さんが冷泉寺さんをどう思っていたのかについてはまったくといってもいいほどふれられていません。
母親は友人同士という縁であり、子どもの頃は一緒に遊んでいた長い付き合いではありますが、幼なじみであり友人である以上の情報はなかったはずです。
ですから本当に読者一人一人の読み方次第なんですよね。
しかもその人が鈴影さんと冷泉寺さんをどう解釈しているのかという各自の銀バラ感がダイレクトに出ることなので結構繊細な問題であるというね。
銀バラファンにとっては根深い問題だと思います。かなり解釈はわかれるんじゃないかな。
というわけで、今回はその解釈についてふれていきたいと思います。
 
 
いろいろな解釈があると思いますが大体、
知った上で接していたよ、総帥はパーフェクトだ派、
うすうす感づいていたよ、レオンが好きなの……?派、
まったく知らなかったよ、苦しいのか……知らなかった派、
これから気づくんだよ!チェイカ―以後に期待派、
この四つに分かれるのではないかと思います。
 
まず、知った上で接していたよ派、について。
鈴影さんは総帥になるためにさまざまな勉強や訓練をしているので当然人の心の動きにも精通していて、冷泉寺さんが自分を見る目や言葉から当然知っていたのではないかというもの。
冷泉寺さんは5~10年以上は恋愛感情をもっていた訳ですし、それだけ長い間想われ続けていれば隠していたとしてもわかるのではないか。鈴影さんは冷泉寺さんが自分を想っていることは知っていた上で、隠そうとしている気持ちを尊重して今までと同じように友人として接していた、という解釈。
冷泉寺さんの感情と自分の感情は別のものであり、応えを求められない限り関係を変える必要はない、という冷静で大人な総帥ですね。
 
次に、うすうす感づいていたよ派。
自分の目線でドキッとしたり、真剣に心配する様子に友情以上のものを感じていたが、それ以上は踏み込んで考えなかった、はっきりとした意識はなかった、というもの。
鈴影さんは三ヶ月間のデートを申し込んできた令嬢のようにわかりやすい好意を向けられることに慣れていた分、冷泉寺さんのように伏せられた愛情というのは気づきにくかったのではないか。
友情以上の気持ちを感じてはいたが重くとらえようとはしていなかった、という解釈。
お互いのために踏み込まずにおく、という人間らしい総帥ですね。
 
そして、まったく知らなかったよ派。
冷泉寺さんは「幼馴染」というものであり、「女性」であるとは意識してなかった。よき友人であって、そこに自分を想っているなんてことは思いもしてなかったというもの。ユメミちゃんがヒロシに感じていたように「古くからの知り合い、幼馴染」枠。
ああみえて心の機微に疎く固いところがありますから、友人である冷泉寺がそれ以外の感情を持っているなんて思いもしなかったのではないか。
冷泉寺さんは一つ下の幼馴染であり、後輩であり、騎士候補生であり、よき友人の一人である、という解釈。
わからないこともある、けっして完璧ではない18歳の少年らしい総帥ですね。
 
最後にこれから気づくんだよ!派
たしかに鈴影さんは冷泉寺さんの想いをスルーし続けてきた。だがさすがにチェイカ―で命をはろうとした冷泉寺さんの気持ちには気づいたのではないか。もしくは冷泉寺さんが鈴影さんに告白する、別れを告げる、闇落ちするなどのアクションを起こして二人の関係性に結論を導き出すエピソードがくるのではないか、というもの。
鈴影さんが向けられた気持ちにスルーで物語が終わるのではなく、それ以後の展開があるんだよ、まだまだ過程である、という解釈。
冷泉寺さんの気持ちにどのようなかたちで応えるのでしょうか、総帥……。
 
 
いかがでしたでしょうか。もちろんこの四つだけではなく、いろいろな解釈があるかと思います。
どう解釈して読むかによって物語のバックボーンが変わってきますよね。
私はどの解釈でもいけるかな。イメージできます。
 
でも、個人的には冷泉寺さんが矜持をかけて守り隠そうとしていた想いなのだから、鈴影さんは知らなかったと思いたい。
鈴影さんがどうのこうのではなくて、冷泉寺さんがそうあろうとしたままであってほしいと思うのです。
 
 
彼は知らずか、知らいでか。
その答えは私たち一人一人の心の中にあります。
正解なんてないからこそ、いつか語りあってみたいなあ、と思います。
地獄に通じない程度に、ね。