Opalpearlmoon

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きっと、会いにいく ~『愛いっぱいのミステリー』雑感~

 
『愛いっぱいのミステリー』を再読して思ったこと。
 
美女丸ってものすごく可哀想じゃない!?
 
ということでした。
 
いや、彼が可哀想なことはよく知ってたつもりなのですが、死と別れがとても遠いものだった子どものころには感じなかったリアリティといいますか、歳をとった分、家族を喪うということの重さがリアル時とは比べ物にならないくらいずっしりきたんです。
 
幼少期に両親が離婚して父と妹と別れ、
8歳で母親と死別し母方の祖母と別れ、
17歳でわずか一週間余りの間に父親、妹、従兄を殺害される。
 
これはきつい、きつすぎる……。
 
あまりに別れにいろどられすぎている気がします。
特に家族の死は重い。
母親を早くに亡くして死の重さをよく知っていた彼は、いっそう家族を大切に思っていたことでしょう。
なのに、突然お父さんと美夜ちゃんと新堂さんを殺されてどれだけ辛かったことか。
呪いの伝説とお父さんの不自然な失踪からはじまり、自ら命を狙われ、親しい家族を喪う。
ずっと世話をしてくれた使用人たちや、付き合いのある街の大人たち、親戚だっているはずです。
しかし、やはり「家族」は特別な存在です。
どれだけ傷ついていたか想像を絶するものがあります。
犯人は死亡しましたが法に裁かれた訳ではないですし、それも呪いの一部と言われてしまえば気持ちのやりようもありません。
築城祭をやり遂げることにこだわっていたのは、当主としての使命もあったと思いますが、それ以上に自分を見失わないためだったのかな、と思います。
イレギュラーなことがおこったときに心の支えとなるのは責任と立場であったりするからです。
こんなときにマリナちゃんと和矢、シャルルの三人がいてくれて本当に良かったと思います。
事件の解決の手助けになったというのもありますけど、弾正家当主の立場だけでなくて、幼馴染の美女丸としても在ることができたのは大きかったと思います。
計算するとマリナ達とは最短で12日間は一緒にいたことになります。
マリナと再会してから金塊が発掘されるまで4日、
お屋敷公開とお葬式がおわるまで最短で3日、名家なのでもっとかかったかもしれません。
白妙姫の呪いをとくにの1日、
マリナの昏睡期間が4日、
大体こんな感じです。
12日ってけっこう長いですよね。
ラスト4日は、マリナは寝てたとはいえ和矢とシャルルがいたわけですから、精神的にだいぶ助けられたのではないかと思っています。
 
再読してしみじみ感じたのは、キャラクターの置かれた境遇に対しては大人になってからのほうが理解できるな、ということでした。
見えてくるものが変わってきますよね。
 
だからこそ、思うのです。
 
 
美女丸は東京の大学に進学するべき。
 
 
美女丸はお父さんが亡くなったこともあって、地元の大学に進学するとばかり思っていました。
家を継いだ訳ですからそうそう離れるわけにはいかないだろうし、離れる気もないだろうと。
そんな彼が放った言葉。
 
「きっと会いにいく!」       (愛よいま、風にかえれ 前編)   
 
この意味は重い。
月影ヶ崎を離れることはないと思っていた美女丸にとって、プロポーズにも近い言葉だったと思うんです。
別れたままにしない、これからも関係を続けていくという決意表明です。
 これはもうね、東京の大学に進学するしかありませんよ。
東京にはマリナも和矢もいるし、いろんな出会いがあるよ。
あ、和矢は横浜か、いいやこの際一くくりでいい(笑)
クロスオーバー大好きなひとみ先生ですから思わぬキャラと出逢うかもしれないし。
先代だって一人で家のことを取り仕切っていたわけではないだろうから四年間は親戚や弾正家を支えてきた大人たちにまかせればいい。なんなら週末は地元に帰るという選択もある。
見識を広げるというのはいいことだと思うのです。
 
美女丸のお父さんは植物学者でもありました。
だから美女丸も「第三十代弾正家当主」だけでなくて、他の肩書、立場をもってもいいんだよ。
それがマリナのいう幸せになることへの一歩でもあると思うから。
 
 
 
 
その会いに行くが異なる形になったのは、また別のお話ということで……。