Opalpearlmoon

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月が満ちるころ


もうすぐ月が満ちる。
ボクは心待ちにしているんだ。
変身は苦しいよ。
でもわかっていればそれなりに対処できるからいいんだ。
 
それより彼女が可哀想だと思うんだ。
だって、心の動きがボクたちにわかっちゃうんだよ。
一番繊細で大切なことが周りに知れちゃうって女の子にとってはつらいと思う。
彼女は平気だと笑ってたけどね。
 
7月の満月、ボクは彼女のうちへいったんだ。
そうしたら皆来ててね、ボクは笑っちゃった。
そしてレオンさんのうちまで歩いたんだ。
秘密の散歩って楽しいよね。
 
月が満ちたら彼女の家に忍んでいこう。
きっと、笑って家にいれてくれる。 
 
 
 
もうすぐ月が満ちる。
満月は私に苦痛をもたらす。
 
眩暈吐き気悪寒、次に激しい傷み、まるで重力が私にだけのしかかるかのように身体は重くなり、意識を手放した瞬間、私は鷹となっている。
どんな仕組みなのか詳しいことはまだ分かっていない。とんでもない病気になったものだ。
毎月チェックしておかないと大変なことになる。外でうっかり変身なんてたまったもんじゃない。
まったく迷惑なことばかりだな。
 
だが、これは私にとって大切な繋がりをもたらした。
それだけは嬉しく思っている自分がいる。
以前よりも彼に近づいたのだから。その事実で私は苦しみを乗り越えていける。
 
これが夜でなかったら、空高く舞っていけるのに。そうしたらどれだけ気持ちがいいだろう。
 
明日は遮光カーテンを二重にし、早めに休もう。
 
 
 
もうすぐ月が満ちる。
オレはかったるい気分になる。
部活も遊びも夜までできねーから憶えておかないといけないし、めんどい。
一日中部屋にこもっとかないといけないし、つまらない。
 
窓の向こうに明かりがみえる。
毎晩、見続けた光景。
お前さぁ、自分がどんなことになってるのかわかってるのかよ。
平気平気っていうけどさ、割とオレたちすごいことになってるぜ。
 
あ、消えた。
7月から大きく変わってしまったというのに、この光景は変わらない。
それがなんだか嬉しい。
オレが狼になっても、おまえが貴女になっても
変わらないさ。
 
明日はどうする?
こうやって見ていようか、駆けにいこうか。
 
 
 
 
今日は満月。
そろそろ日が沈んで月が昇るころだわ。
あたしはなんだかどきどきしてしまう。
右手で触れる。見た目は可愛い、満月色のピアス。
これと同じ波動をもつというからかしら。
 
このピアスはあたしと皆を大きく変えてしまった。
平気っていってるけど、やっぱり気になる。
そんな訳ないもの。
皆も、そしてあたしも。
 
怖い思いもいっぱいしたし、これからもするのかな… 
 
まあ、なるようにしかならないものね。
どうにかなるように、頑張るしかないじゃない。
大丈夫よ、きっと。
 
あたしは居間の窓から外に出て、満ちた月を見上げた。
 
 
 
今日は満月。
茜色から群青色へ、そして淡い繊細な輝きが照らし出す。
 
月はオレに使命を刻みこむ。
七聖宝の紛失。それに伴う月光のピアスの一連の出来事。
…銀のバラ騎士団創立以来の不祥事、不名誉。
汚名を雪ぐためなら、なんでもやってやる。 
 
ふと思い出す。
起きてしまったことは仕方がない。次の方法を考えばいい。
 
そのとおりだ。微笑みがもれる。
霊感を与える少女、か…
 
夜の帳がおり、一面が白銀色に輝いている。
ひょっとしたら、今夜も来るかもしれないな。
ロッジに明りをともしておこう。
 
オレは柔らかい銀色の月を見上げた。