Opalpearlmoon

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一緒に、貴女と。 聖誕祭~総帥に捧げる小品集Ⅴ~

 
自室に戻ると、時計の針が頂点を越えたところだった。
真っ直ぐにデスクへ向かう。
そこには愛らしい絵の描かれたカードが置いてある。
アドヴェンツカレンダー。
弟のためのものとは別に、オレのために手作りされたものだ。
 
“鈴影さんの分のアドヴェンツカレンダー。是非やってみてくださいね!”
 
ユメミは嬉しそうに微笑んで手渡してくれた。
二つ折りになっていて、中には大きなクリスマスツリーの絵が描かれてあり、24の数字が散りばめられている。
あけていくと、数字の下からオーナメントやプレゼント、雪景色の窓がでてくる仕掛けになっている。
アドヴェンツカレンダーは子どもの時以来だ。
少女らしい愛らしい絵は、オレを和ませてくれた。
丁寧に心をこめて作ってあって、ユメミの愛情を感じることができて、嬉しかった。
 
いつしか、日付の数字をあけるのを楽しみにするようになった。
何がでてくるのか、わくわくするようになった、
子どものころのように。
 
それも今日で終わりだ。
残るはあと一つ、24の数字だけ。
クリスマスツリーの真ん中にひときわ大きく書かれている。
名残惜しく思いながら、オレは24と書かれた扉をあけた。
最後はだいたい主イエスの降臨と決まっている。
しかし……
 
「鈴影さん、お誕生日おめでとう!!」
 
丸みのある柔らかい筆跡で枠いっぱいに書かれていた。
彼女らしい、ささやかで可愛らしい仕掛け。
思いがけない祝いの言葉に、湧きあがる喜びで胸が震えるのがわかる。
言葉の向こうにユメミの笑顔が見えるようだった。
どのタイミングであけるかなんて、ユメミは知らない。
でも、誕生日をむかえて一番に君の言葉を聞けた。
一緒に貴女といるような気がした。
 
それがたまらなく嬉しかった。
 
「……ありがとう」
 
カードを胸に押しあてる。
ぬくもりを感じるように、与えるように。
そしてあふれる想いと共に、オレは君に聞かせるかのようにささやいた。